豊中ビーキャン【Day7】挑戦編レポート

12月3日の豊中ビーキャンは、経営者の本音トーク。庭の終活専門「スマートガーデン」の斎藤栄三さんと、焼き菓子専門店「Yakigashiya Lucca」の谷口朋美さんに、事業を始めるきっかけや準備、日々の経営で心がけていることなどお話をお聞きしました。

起業のきっかけ-斎藤栄三さん

50年以上、外構造園工事の事業を行ってきた斎藤さん。庭に関する相談内容が変化していると気付き、新規事業「スマートガーデン」を始めました。現在は大手ホームセンターのエクステリア工事と、二つの事業を行っています。

「庭石、燈籠、松はいらない、親世代の庭をなんとかしたい人が増えた。これからは『庭じまい』が求められる。その家庭の要望に合う庭の在り方を提案したいと考えました」と話す斎藤さん。起業するまでスムーズに進んだのは「運があったから」と笑います。

「成功すればラッキーかなと思って起業。努力した全員が成功するわけじゃない。でも、努力した人しか成功できない」と、実は小さなことの積み重ねを大切にしてこられています。

起業のきっかけ-谷口朋美さん

谷口さんは製菓専門学校で学び、フランス校へも留学。卒業後レストランに勤務、日本とフランスを行き来していました。有名ホテルのレストランで起ち上げも経験。業界では珍しく育児休暇も取得しながら、厳しい環境で経験を重ねました。

「第一線のシェフの下で働くことが楽しかった。でも、事業をするなら一つに絞ろうと、自分が好きな焼き菓子に特化することにしました」と言います。

「勤めていればお給料はいただける立場。今は、この仕事で子どもを育てていかなきゃいけない。起業するときは清水の舞台から飛び降りる以上に覚悟しました。大変だったことがあったかもしれないけど、そんなに覚えていませんね」と笑います。

事業を始めるときに大切なこと

70歳を過ぎて新規事業を始めた斎藤さんは、起業に必要なことが5つあると言います。「健康・想像力・心配り・努力が必要。もう一つパソコンが使えることも必要。私も還暦を過ぎてから学びました」

成功は運だとしながらも毎日コツコツと学び続けていらっしゃいます。

これまでの50年間で知り合った職人さんや友人とのつながりも、事業のスタートをスムーズにしてくれました。会社を興すための書類作成は知人に依頼し、費用を抑えることができたのです。

「自分でできることは自分で。経営に直結する固定経費を抑えられれば、失敗は少ないのではないか」と話します。

職人さんには、休憩や食事で気遣いさせないように心配りをするなど、周りへの配慮も忘れません。

起業までの経験が自信に

谷口さんは退職後も、知人からのオーダーで結婚式の引菓子やケーキを作ったり、イベントに出店してお菓子作りを継続していました。転機は蛍池の「デコボコキッチン」との出会い。昼の時間に店舗内スペースを借りて営業させてもらったのです。

「自分の店づくりのための準備と練習ができました。資金も少なかったのでありがたかったし、何よりも自信を持てたのが大きい。あの時間がなければ、店をする勇気は出なかった」と話します。

「仕事は楽しいだけじゃないし、自分のペースでできるものでもない。趣味で楽しいと思えているなら仕事にしなくてもいいかも」と、お話からは好きなことを仕事にする厳しさも伝わってきます。

フランスでの修行や有名店での経験については「ぜったい必要なわけじゃないけど、そのときに得た知識や技法の多くが役に立っています。ネットで調べられることもあるけど、目に見えない大変さを体験できました」と話してくださいました。

事業とお金の事

事業をするうえで、お金の課題は大きいものです。

斎藤さんは、借り入れをしないと決めて事業をスタートさせました。

「借り入れがなければ倒産することはない。スマートガーデンでは、工事前に着工金をいただく。借り入れをすると返済や金利などを考えないといけないので」というのがその理由です

参加者からは「二つの事業を行うときに注意していることは?」と質問も。「経営は独立させたほうがいい。『人』と『お金』を融通させると片方から不満がでる」と豊富な経験からアドバイスをいただきました。

谷口さんは設備用の資金が必要だったと言います。

「ムリなく返済できるようしっかり事業計画は立てました」と、資金面では豊中商工会議所にも相談しました。

子育て面では、ママ友を頼ったり豊中市の保育制度なども活用。一人ですべて抱えるのでなく、頼れる誰かへ相談することも経営者には大切なことのようです。

自分の事業と世の中の流れ

事業をしていると、世間の流れから影響を受けることも。世の中の動向など、お二人はどう対処しているのでしょうか。

「時代の流れを読み取る力が求められる」という斎藤さん。

「庭じまいは、造ったものを次にどうするか提案する仕事」と、情報を仕入れるアンテナを常に張っています。仕事の道具も植木一つも流行や変化がある。時代の先端を知っていること、経験していることこそ、自分の引き出しになると話します。

谷口さんは「流行に乗ろうとは考えないけど、なぜ流行っているのかは意識している」と、展示会へも積極的に出かけるのだとか。

知らずに選ぶのと知って選ぶのとでは違うというお二人。常にアンテナを張っておくことも、経営者に求められる姿勢です。

「仕事とは?」

忘年会を兼ねた懇親会も大いに盛り上がりました

斎藤さんと谷口さんには、参加者からの質問にも答えていただきました。

「お二人にとって仕事とは?」という質問に、

「仕事は仕事。楽しむものだ」という斎藤さん。

谷口さんも「この仕事が天職。凹んでも寝たら忘れられる」と笑います。

今後の事業展開について、斉藤さんは、事業が大きくなれば、いろんな人と手を組み知恵を借りながら進めたいと考えています。

「仕事は90歳まで続けたい。今こうしているのは、運があったから。運をつかむ努力をしたい」と熱く語ってくださいました。

谷口さんは、今の店を大切にしながら、ジェラートとカフェを提供できる店を作りたいと考えています。「おいしいお菓子を作るという気持ちは変わらない。利益を優先するために妥協するのでなく、お客さんに『おいしい』と言ってもらってまた来ていただけるような店にしたい」と話してくださいました。

事業を始める人へ

斎藤さんと谷口さんからは、事業を始めようと考えている人へメッセージをいただきました。

「とにかく『やってみなはれ』と声をかけたい」と斉藤さん。

「失敗も勉強のうち。倒産を避ける方法はあるし、やってみてダメなら引いたらいいし、引いてまた押して…とそんな感じでもいいと思う」と背中を押してくださいました。

谷口さんも「いろんな準備やできる限りの努力は必要だけど、やってみたらいい」とおっしゃいます。

「私もまだ道の途中。これが失敗だったとしても、やらなかったときの後悔のほうがイヤだっただろうと思っています」と、一歩踏み出したくなる言葉をいただきました。

斎藤さん、谷口さん、お忙しい中ありがとうございました。

次回は、【広報編】「買いたい!」と思ってもらうために伝えるべきコト。です。

2020年1月16日開催【DAY8】広報編はこちら