人気の味噌ラーメン専門店「みつか坊主」(豊中市蛍池)店主の齋藤光典さんは、2022年秋に無人うどん店「惑星のウドンド」をオープン。「僕にとって失敗とは、成長させてくれる宝物」という齋藤さんが、起業に至った地元・蛍池への思いや、事業を進めるうえで大切にしていることを話してくれました。
経験ゼロから始めたラーメン店
斎藤さんの店、味噌ラーメン専門店「みつか坊主」は、オープンから今年で15年。
現在は阪急蛍池駅の東側・国道176号線沿いに移転。おいしいラーメンと、人が集い交流する場を提供しています。 蛍池出身の齋藤さんが、ラーメンで起業すると考えたのは、北海道で暮らしていたころ。周りには、プロを目指すスノーボーダーが多く「スノボで生活していけるのかな」「起業したらいいのに」と、眺めていたといいます。そんな齋藤さんの考えは、知人からの「自分で稼いでからモノを言え」という一言で一転。自分が大好きなラーメンで起業しようと決意します。
ところが、ラーメンを作ったこともない若者に、金融機関が融資をしてくれるはずもありません。ある金融機関からの「なぜ、経験もないのにできると思うのか」という指摘に応えようと、目の前の課題を一つずつクリアし、融資へこぎつけました。
「経験もなくて周囲からは大反対された。そのぶん、失敗はあるかも」という齋藤さん。語ってくれたのは「事業を続けるために大切にしていること」でした。
「オープン当初は、自信がなかった」
齋藤さんが「あれは失敗だったのかな」と最初にあげたのは、店をオープンしてすぐのころの話。周りからのアドバイスに、自分の気持ちが揺れた時期があったのだそう。
「一日の来店が3人、4人という日もあった。立地のせいだと考えたり、周りから『もっとこうしたら』と言われることも多くて、自分でも不安でした」周りからの意見に、自分の不安を合わせようとした齋藤さん。
「そしたら、軸がぶれた。これじゃだめだなと、自分のなかで『なんのためにこの事業をするのか』という軸を決めました。なにか起こっても戻ってこられるように」
その軸とは「諦めないこと」と「蛍池を盛り上げる」という2つ。
「人の意見に揺れることはあります。でも、アドバイスを取り入れるかどうかを、自分で振り分けられるようになりました」
不思議なことに、ブレないと決めると、盛り立ててくれる人との出会いも増えたとか。
「いま、成功しているとは思っていない。でも、目標と軸があるので『進めている』と感じている」と話します。
心に残っている2つの言葉
「軸を持とう」と考えた時期に出会った2つの言葉も、支えとなったと振り返ります。
一つは「お前は、カップラーメンを作ってるのか?100%を求めたら、店は開けられない」という言葉。
理想の味を再現しようと試行錯誤していた斎藤さんは、うまくいかない日は休業するほど、完璧を求めていたのです。そのとき出会ったのが「カップラーメンを作っているのか」という言葉でした。
「神経質になっていた部分をリラックスさせられた。『違うもの』を『一つの視点』として捉えられるようになった」と、今の齋藤さんの考え方にも繋がっているようでした。
もう一つは「カッコつけるな」という戒めです。
それは、店をオープンして2、3年目のころのこと。
「人間で2、3歳といえば、少しぐらいのことは怒られない。だから、カッコつけるんじゃなくて、今はやってみたらいい時期なんだと思いました」
「これはこうしなければいけない」とみんなが踏みとどまることも、時にはそれにとらわれず、トライすることも大事だという意味です。「たいていのことは乗り切れる。たまに運が必要になることもあるけど、でも大丈夫」と話します。
勝算が6割になったら、やる!
自分のなかの軸を大切にしてきたという齋藤さん。
「失敗しないように想定されるものはクリアにしておくことも、大事。でも、失敗は次のステップに進んだり、強くなれる機会。失敗を恐れて何もしないことのほうが、失敗だ」
そこで、斎藤さんが心掛けているのは「勝算が6割になったら、やる」ということ。
2022年秋には、旧みつか坊主の店舗で無人うどん店「惑星のウドンド」をオープンさせました。
「事例がないしリスクもある。でも、みつか坊主のスタッフのことや地域への還元を思うと、チャレンジする必要があると考えた」
24時間営業のセルフのうどん店は、オープンしてみると自然とコミュニティスペースのような場所にもなり「社会実験をしているような気持ち」だそう。
しっかり頭で組み立てて、勝算が6割になったらやる。さらに、これまで重ねてきた経験があれば、少しのイレギュラーが起きても柔軟に対処していけることを、事例として話してくださいました。
「やってもいいし、やらなくてもいい」

「やってみたらいい」と自身の経験も交えて話してくれた齋藤さん。
けれど、起業しようと思っているのに踏み出せないという人に対しては「踏み出さないでもいい」と思うのだそう。
「踏み出せないのは、6割の勝算に至っていないからか、自分のなかに『誰がなんというおうとやりたい!』という思いが強く湧き上がっていないからだと思う」
起業には、ある程度の覚悟も必要。なにか足りないものがあって不安なら、ゆっくり考える時期だということ、という齋藤さんの考えに、頷く人も多くいました。
「僕は、スタッフにも『それ、失敗するで』とは言わない。自分で修正する力をつけてほしいと思うし、ひょっとすると、僕が失敗したことを彼らは成功させるかもしれない。だから、恐れずにやったらいい」
「経験は強い」と、軸と目的を持つことで、少しのトラブルならクリアできる、と話してくれました。
セミナーの後半は、会場の参加者も「自分にとっての失敗」をシェア。それぞれが、斎藤さんに背中を押してもらえたようでした。
齋藤さん、楽しいお話をありがとうございました。
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