第3回豊中ビーキャンは、ホテル勤務の経験とスキルを活かして起業し、焼き菓子専門店「YakigashiyaLucca」を経営する谷口朋美さんをゲストに迎えました。
もともと起業する予定はなかった谷口さん。どのようにお店をオープンさせ、どんな課題に取り組んでこられたのかをお聞きしました。
Yakigashiya Luccaをオープンするまで
2016年10月27日に豊中駅近くに「Yakigashiya Lucca」をオープンした谷口朋美さん。
「パティシエになりたい」と考えたのは中学生のころ。日本でパティシエという仕事が紹介され始めた時期で「フランスに行きたい!」と強く思ったものの、当時は「自分の店を持ちたい」とは考えていませんでした。
専門学校へ進み2年目をフランスで迎え、一度帰国してから今度は仕事で渡仏。三ツ星レストランのデザート担当として仕事に就きました。その日にすぐ「これを作って」と任されることに驚きながらも、やるしかない、と目の前のことに取り組む日々だったといいます。、
帰国後は、リッツカールトン大阪のフランス料理のレストランでパティシエとして働きます。コース料理なら一番最後に提供されるのが、デザート。そのため、仕事は深夜まで続くことがほとんどでしたが、海外からシェフを招いて開催するフェアがあるなど、魅力や学びが多かったと振り返ります。
3年後、新しく開業したル・コントワール・ド・ブノワへ転職し、さらに経験を重ねます。2年たったころに育児休暇を取得しますが、子育てと仕事の両立は難しく、復職後約1年して退職しました。
間借り営業からスタート
「勤められないなら自分で仕事をつくろう」と、自宅や場所を借りてお菓子作り教室からスタート。そのころは「キャラ弁作りの講座」をするなど「求められたらなんでもする」という日々でした。
2012年、たまたま出かけた美容室のスタッフに「デコボコバル」のオーナーを紹介されたのをきっかけに、店を一緒にすることになります。バルの夜営業が始まるまでのあいだ、間借り営業で焼き菓子の販売をスタート。自分のやりたいことを叶えられるようになりました。
最初のうちはアルバイトもしていたという谷口さん。限られた設備とスペースでどう売り上げを立てるのか考えて、親子で参加できるアイシングクッキーの教室も開き、少しずつお客さんも増えていったといいます。間借り営業も3年が過ぎるころには「店を持ちたい」と、次のシーンを考えるようになっていました。
店作りは丁寧に検討を
自分だけの店を持って好きなだけやりたいことをしたい、といよいよ阪急豊中駅近くに「Yakigashiya Lucca」を2016年にオープンさせます。
物件選びや店作りでは、しっかりプランを練っていたと谷口さん。
「当時はお金もなかったので不安でいっぱい。豊中商工会議所へも相談して、資金面なども背中を押してもらい、事業計画書を作ることも支援してもらいました」
デコボコバルでの間借り営業を辞めてから、約2ヶ月を店舗オープンへ向けての準備に費やします。
なかなか見つからなかった物件選びでは、ある物件を契約する30分前に「見てほしい場所がある」と不動産屋さんから連絡があり、今の場所に決まりました。
「はじめから駅に近い場所がいいと考えていました。でも、大きな通りでなくてそこから少し隠れたような場所が希望。そのとおりの場所になりました」と場所選びもしっかり計画したといいます。
店を「焼き菓子専門店」としたことにも、狙いがありました。
「私がひとりでやる予定だったので、一つに絞りたかった。『ここにしかないもの』を専門的にやりたいと考え、ロスも少ない焼き菓子専門店に決めました」
お土産や贈り物に選ばれる商品と店づくりをと、周辺の環境もしっかり調べるなど、戦略を持って店オープンへ向けて準備を重ねた谷口さん。
こうして、YakigashiyaLuccaは、朝からお客さんが絶えることない「わざわざ出かける人気店」になっています。
スタートが間借り営業だったことは、店舗を持つまでのベース作りにもなっていたのかもしれません。子育てをしながら仕事をするには「夜営業までのあいだの営業」というスタイルが「当時は良かったと思う」と言います。
現在、スタッフは10人に。「それぞれの特性を見極めて仕事を任せたい」としながらも「今もプレイヤーだし、まだまだ『私がやる』と思っています」と、日々アンテナを張りながらお菓子作りをしています。
今の自分は想像していなかった
パティシエとしてスタートしたころは「ずっとフランスにいるか、日本にいるならフランス語を使う環境のレストランでデザートを作っていたい」と考えていた谷口さん。そのセクションのシェフとして、レストランやホテルで働き続けることを夢見ていました。
「昔は、どんな店で働いてきたのかなど、経歴がステイタスのように思っていたところがありました。でも、子どもができて仕事から離れてみると、付き合うのは同じ立場のお母さんたち。私がどこで働いてきたかなんて、知らない人がほとんど。『そうか、誰も私のことや経歴なんて知らないんだ』と、その良さを知ったというか、なににもならないんだなと思いました」
これまでの経験よりも、求められることを一生懸命やっていこうと考えたといいます。 バリバリと経験を重ねて活躍する同僚や先輩たちを見ながら、羨ましく感じたときもありましたが、子どもとの生活が何より大事だと考えているそうです。
やるべきことをこなすだけ

豊中ビーキャンの今年度のテーマ「失敗」について聞かれると「誰でも間違うことはあるけれど、それが失敗かといわれたら、そうじゃない」と言い切る谷口さん。
Luccaが6年目を迎えたことも「求められていること、やるべきことを日々こなしているうちに6年たった」と振り返ります。
本を読んだり講習会へ出たり、気になる場所・店へ出かけるなど、トレンドをキャッチするアンテナは張っていて、お菓子ではないところからアイデアをもらうこともあるのだとか。
新しいお菓子作りにトライしながらも「いつ行ってもずっと変わらないクオリティの商品がある店」であることも大事にしています。
「ゴールがあるわけじゃないし、やるべきことをするだけ。お店は、女性スタッフばかりだけど、女性が働きやすい会社にしたいと思っています。『お母さん』が働ける場所があったらいい。飲食業界は厳しい部分もあるけれど、みんながプライベートも充実させられる会社を作りたい」
近いうちにECサイトでの販売もしたいという谷口さん。
「そのためには、作業性をあげるために別のスペースも考えたい」と、次へのトライも進んでいるようでした。
谷口さん、楽しいお話をありがとうございました。
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