自社の商品・サービスをどのようにお客さんへ伝えたらいいのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
豊中ビーキャン5回目は「これからのお客さんとのつながり方」について、株式会社トリ風土研究所の宮武祐右さんにお話しいただきました。飲食店や農家の商品開発やPRの支援で日々心掛けているのは「伝えるから、伝わるに変換するお手伝い」という宮武さん。
お客さんの事業展開や課題解決に向けた提案を、どのように行っているのか、具体的な事例も交えて紹介してくださいました。
PRや販促・商品開発の支援で心掛けていること

現在、主に農家を対象に商品開発やPRのサポートをしている宮武さん。その根幹にあるのは、求人広告企業に勤めていたころの経験です。
「クライアントである企業に、事業展開の方向や何を求めているのかをヒアリングし、広告をつくる」ことが仕事。クライアントのお客さんである転職者へメッセージを届けるためには「クライアントの過去・現在・未来」と「背景や時代の事実」を探ることが大切だそう。
「クライアントが『農家』さんなら、たとえば製造加工の工場を作ったとしても、それには理由がある。今の時代背景や起こっている事柄も含めて理解すること」を心掛けているといいます。
「顧客(カスタマー)・自社(カンパニー)・競合(コンペティター)」についての整理もします。
今の現状と「なりたい未来の姿」とのギャップをどう埋めていくか、その事業の顧客への「提供価値」を考えていくのだそうです。
おもしろさが伝わった事例
宮武さんは、これまでの取り組みも紹介してくださいました。
クライアントの現状や未来と、時代の背景や事実をもとに取り組んだPR事例です。
一つが、鶏を「一羽すべて食べること」の楽しさを発信する「トリの教科書」の作成です。
広告の支援をしていた焼き鳥店の方に、生産地へ連れて行ったもらったときのこと。鶏一羽のなかでも、食べられずに余る部位があり、需要と供給のバランスが崩れていることを知ったことがきっかけで作ったそう。
おもしろさがメッセージとして伝わって、新規のお客さんの来店がアップ。宮武さん自身が農業界に携わるきっかけにもなりました。
もう一つが、雇用を創出しようという取り組みです。
農業界では、高齢化や後継ぎがいないことが課題としてあります。一方で農業高校では、農業に携わる卒業生は毎年1割ほどだそう。
そこで宮武さんは、兵庫県の農業高校の高校生と一緒に、まぼろしの地鶏といわれる「ひょうご味どり」の商品加工を行うことに。「ひょうご味どり」の復活で未来の農業経営者、雇用を創出していきました。
背景にあった、農家の課題や農業高校の卒業生の課題と、それぞれの「なりたい未来の姿」が伝わり、メディアにも取り上げられ、クラウドファンディングではわずか4日で目標を達成しました。
ホンモノのストーリーは応援される
クライアントの過去・現在・未来を整理するとともに、「その事業の顧客への提供価値」について、考えるという宮武さん。
うまく顧客へメッセージが伝わった事例のなかにも、実は「もっと考えたらよかった」と感じたこともあるといい、理由はおもに「価格の決め方」にあるようです。
例えば、クラウドファンディングで応援された商品・プロジェクトなら、お客さんは「その商品・プロジェクト」に価値を感じてお金を出していると認識することが大切。
価値を応援してもらっているとは「なぜこれをするのか」「大事にしているのは、なにか」などの、本物のストーリーが伝わっているということ。だからこそ値段の決め方は慎重に考えるべきです。
ブランドのつくりかた(企画・アイデアの考え方)
商品・サービスをどう伝えたらいいかを考えるときには、どの視点で考えていくのかも重要。宮武さんからは「企画・アイデアの考え方」を紹介してもらいました。 どんなことを意識して考えていくのかのポイントは、次の5つです。
こまりごと
困っていることへの提案には、企画・アイデアにユーモアを入れて顧客に楽しんでもらえるようにする。
ドキドキ、ワクワクすることの追求
→気持ちが向かないことをするときは、小さなことでもいいので、自分がドキドキワクワクできるものを見つける。おもしろがれるものを見つける。
分析、構造化、型化
→お客さんの困りごとを分析して「型化」するのは大事。
情報収集、事例を集める、お客さんに聞く、立ち読み、街で広告を見たり歩いている人を見たり。
ネットだけでなく体験することが大事。
置き換え
若い人がどんなことをしているかも見ておくといい。
例えば、ライブでもオンラインが普通になってきた。これからも表現や入手方法が変わっていくのかもしれない。
買えない人を増やす努力
「プレミアム」は最上級、「ラグジュアリー」は競合がなく圧倒的な価値を見出しているもの。
「ラグジュアリー」=「あなたの商品がほしい」には「普及」ではなく「認知」されること。
みんな知っているが、なかなか手に入らないことでブランドを高めることができる。
商品・サービスの企画やアイデアの考え方では、さまざまな事例も紹介していただきました。
「なにが伝わるのか」を考えていくことが大切だというお話に、会場では、自社の商品・サービスにあてはめて考えて質問する人も。
「自分たちが、こういうところに認めてもらいたい、と思うところへアプローチすること。価値観が近い人に届けば、選んでもらえる」という言葉に、ハッとした人も多いのではないでしょうか。
宮武さん、ありがとうございました。
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