第4回の豊中ビーキャンのゲストは、味噌ラーメン専門店「みつか坊主」を経営する齋藤光典さん。
味噌ラーメン専門店の経営を始めて15年になるという齋藤さんは現在、蛍池と梅田で店を経営しながら、さらに新しい事業も立ち上げています。
ご自身の経験を通して考える、新事業を立ち上げる際のポイントをお聞きしました。
ビジネスを展開するうえで理解しておきたい基礎知識や陥りやすい問題など参考になる話を聞けた2時間でした。
味噌ラーメン専門店を作った理由

齋藤さんは、味噌ラーメン専門店を作った理由の一つに、地元の大人たちの「昔はよかったな」という会話への違和感をあげます。
自分の行動で地域を変えたいと、北海道のラーメン店を大阪へ誘致することにしました。ラーメンを作ることの大変さを理解したいと、自分で毎日ラーメンを作り始めた齋藤さん。
ところが、当時から付き合いのあった製麺店に麺づくりを頼んだところ「明日はこのスープに合う麺を持ってくるね」ととても熱心。「もう、自分でラーメン店をする、としか言えなくなった」と、自分でラーメンを作ることになったのが、みつか坊主の始まりです。
「飲食店を作ることで、人が集まったり、誰かを助けられる仕組みができたらと思っていた」と話します。
多店舗展開をしないわけ
多くのラーメンファンが遠くからも訪れるという、みつか坊主。今は豊中市蛍池と大阪梅田に店舗を構えていますが。さらに店舗を増やすのでなく、さまざまな取り組みをしている印象があります。
「多店舗を管理していくよりも、僕自身がおもしろみの中にいたい」のが、その理由。
地方のイベントへ出かけ、店やお客さんと楽しむなかで「地域でシェアできるネットワークを作れたら」と考えています。
メーカーさんや店や地元の人たち…、それぞれが困っていることや興味のあることをつなぎ合わせると、課題の解決に繋がる場合もあると気付き、地域のお客さんも巻き込みながら、新しい「コト」への取り組みを始めています。
新しい挑戦をすること
齋藤さんの新しい事業への挑戦は、自分がワクワクするため。同時に、スタッフたちにも次のステップへ進んでほしい思いがあり、経営者としての責任感のようなものも感じました。
「道を作っていきたい」と、スタッフたちが次のポジション、フィールドへと移れる環境を整えることを大切にしています。
新しい事業を始める際に気を付けているのは、自分の信念・軸がぶれないようにすること。
「自分がワクワクするかどうか」
「なんのために、誰のためにするのか」
この二つの問いかけが斎藤さん自身を動かす源です。
「自分のところだけ利益があがっても、継続できない。応援がなければ潰れると思っている」という言葉が印象的でした。
新型コロナの拡大の時期は
世の中が大きな転換期を迎えた、新型コロナウィルスの拡大。齋藤さんは「考える時間をもらえた」と振り返ります。自分たちのやってきたことをコロナ禍でどう表現していくのか、冷静に考えた期間。それは齋藤さんが日ごろから、課題のなかにチャンスがあるという視点でものごとを見ていたからかもしれません。
「みつか坊主」が通販事業を始めたのも、この時期でした。
「やろうと決めたら動く。始めるまではじっくり考えるけど『やる』という考えに60%ぐらい達したら動く」と言い、通信販売への取り組みもスピーディでした。
「考えすぎるとできなくなる。想定外のこともトラブルも出てくるものだから、やりながら修正していけばいい。大事なのは慌てないこと」という言葉に、課題に対して「困った」と立ち止まってしまうのでなく「困ったけれど、どうしたらいいか」の視点を持っていることがわかります。 この姿勢が、課題の中からチャンスを見つけることに繋がるようです。
考える時間を大切に
コロナ禍を「考える時間をもらった」という齋藤さん。普段から、一人で考える時間を持ち、できると思ったら動くようにしているそうです。
「ちょっとしたアイデアはメモして、半年に一度はそれらを整理しています」
誰のためになることなのかをすり合わせ、事業計画書を書くところまで考えるものもあるのだとか。
「だれのために」が、斎藤さんにとって重要。
それをするためにどれぐらいお金がかかるかも大事。けれど「自分は、これをすることでどんな気持ちになるのか」の確認を何よりも大切に考えています。
半年ごとにアイデアや考えを見直す習慣があるので、お金の課題も「半年耐えられたらいい」という考え。次の半年へ進むときに収益が出ているか、自分のワクワクが止まらないのかどうか、を確認します。「でもお金がなければ継続はできない。だったら、次の半年はどうするか、と考えていけばいい」というのが齋藤さんのやり方です。
齋藤さんにとっての企画書は
齋藤さんは、頭の中にあるものを整理するときに「企画書」を書きます。自分が貯めてきたものを一度テーブルに広げて整理する作業で、それが事業計画書という形になることも。
面倒に見える作業ですが、助成金や補助金の申請をする際には、必ず必要になるのが計画書。自分のやりたい計画のために助成金や補助金を使おう、という視点で考えるので、事業計画書を作っていても楽しいのだとか。
「厳しい目で自分のアイデアを見てもらえる機会。保留にするアイデアもあるけど、何年後かに見たら『おもしろいやん』とブラッシュアップしていくものもある。計画書の作成はおもしろいし、ありがたい」
半年ごとに企画書を書くことで、アイデアをかたちにする作業が苦にならないのかもしれません。
新しいことをかたちにするのはむずかしいという人もいるでしょう。斎藤さんも「思いついても深掘りしていくのは月に2,3件。さらにやれそうだと先に進められるものも、年に2、3件。ほかで誰かがやり始めれば、それは僕じゃなくてもいいんだと思う」と言いきります。
時には、技術的にむずかしいことや資金の問題に悩むことも。そんな場合は、できる人に助けてもらうのも一つの方法。どう収益に繋がるのかは時間がかかることもありますが、点がしっかり繋がっていれば、助けてくれる人や機関に出会えるとことあるでしょう。
「かたちにすることやスタートすることより、難しいのは継続」
齋藤さんは、どう継続させていくのかを組み立てるところもおもしろいのだそうです。
一歩踏み出すためには?
とはいえ、なかなか一歩を踏みだせずにいる人も多いでしょう。
齋藤さんは、考えることは大切だが考えすぎないことも大切だと話します。踏み出せないのは、何かが足りないのかもしれませんが、人に聞きすぎて迷っていないでしょうか。
「考えて決めたことはすぐ動く」
「謙虚であること」
「仲間を大切にすること」
この3つを、師匠として尊敬している人から教わったと最後に紹介してくれました。
「新しいビジネスの立ち上げ方というテーマは、僕も難しいなと感じます。新型コロナのことで、社会も新しくなったから。言い換えれば、だからこそチャレンジしていいんだと思う」と斎藤さん。
「自分はなにをしたいかが、一番大事。だから不正解がない」という言葉がおもしろくて心に残りました。
齋藤さん、ありがとうございました。
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