豊中ビジネスアップキャンプ2回目は「小さな会社・起業家のためのこれからの公的支援機関の使い方」がテーマ。
豊中商工会議所事務局長の吉田哲平さんをお招きして、事例も交えて公的支援機関の活用のこと、経営者として気を付けることなどをお聞きしました。
- 公的支援機関って?
- 事業資金のはなし
- 法人?個人?事業形態は?
- 事業計画書は必要?
- 補助金と助成金はどう違う?
- 事業を軌道に乗せるには?失敗しやすいのは…
- まとめ・これからのビジネスは
これまでに1,000人以上の経営者の相談を受け、さまざまなケースを相談者とともに経験してきた吉田さんのお話は、参加した皆さんも今の自分に置き換えて考えやすく、参考になったようです。
公的支援機関って?

起業や事業について相談したいとき、皆さんは誰に話をしますか?
事業をしている人もこれから起業する人も、誰もが無料で相談できるところが公的支援機関です。
豊中商工会議所も公的支援機関の一つ。
豊中市内や近隣では「とよなか起業・チャレンジセンター」(豊中市岡町)や「大阪産業創造館」(大阪市中央区)も誰でも相談できる公的支援機関です。
ほかに、ものづくりに特化した東大阪の「MOBIO/モビオ(ものづくりビジネスセンター大阪)」や、海外展開について相談できる「ジェトロ」、研究開発から製造まで開発ステージに応じた支援をする「大阪府立産業研究所」などさまざま。
「まずは、各市に在る商工会議所へ気軽に相談を」と吉田さん。
幅広くセミナーも実施しているので、関心のあるセミナーに参加するなど普段から足を運んでおくと、いざというときにも相談しやすそうです。相談する場合、内容に合わせて専門家へも繋いでくれますので、事前に予約しておくとスムーズです。
事業資金のはなし
事業を進めるうえでお金の話は避けて通れません。
「飲食や美容など場所(店)を構えるなら、とにかく貯金。借り入れをする場合も、資金調達したい額の1割以上は自己資金として用意できないと、話にならない」とバッサリ。
貯金も、自分で働いてコツコツ貯めて、通帳にその証があることがポイントです。
「一番ダメなのが、親族から借りて自己資金額をクリアするためだけに、口座に入れるパターン。コツコツと貯めてきている人は、金融機関からの評価も高くなる」と吉田さん。
事業をすでに行っているなら、試算表・決算表はもちろん、数字の出入りを管理できていることが重要です。
前の月の数字がわかる状態なら「この経営者はきちんとしている」と判断してもらえます。
資金調達が必要な場合、まずは公的支援機関へ相談を。商工会議所を介して金融機関へ行くのと、個人がいきなり行くのでは状況が異なる場合もあるからです。
金融機関からの借り入れをスムーズにするためには、気を付けることが2つ。
一つは、日々のお金の流れを把握していること。
もう一つは、身近な場面での支払い期日を守っていること。
クレジットカードの支払いが何度も遅れていたり、携帯電話料金の支払いが滞っていた形跡があると、スムーズな資金調達ができない場合も。
「特に起業前は、事業計画と本人の人柄と自己資金だけが、金融機関にとっての判断材料。だからこそ、日々のお金の流れの把握と、さまざまな支払期日を守ることが重要」だそうですよ。お気をつけて。
法人?個人?事業形態は?
事業をスタートさせるとき、よくあるのが「法人にするべきか?」という質問です。
「それは、将来どうなっていきたいかで決める」というのが吉田さんの答え。
株式会社、合同会社、個人事業主の形態で考えたとき、創業してすぐの取引先が「法人でなければ契約できない」という場合以外は、無理に法人にする必要はないそう。
「創業時に明確な理由がなければ、個人事業主でいいでしょう。ただし、個人事業主は生活と一体になる部分が多いので、お金の管理はしっかりと」とここでもお金の話が出てきました。
仕事とプライベートを分けて管理する力が、経営者に求められているとわかります。
事業計画書は必要?
創業セミナーを受講して「事業計画書の作り方」を学んだ人も多いのではないでしょうか。
そもそも「事業計画書」はなぜ必要なのでしょう?
「メリットの一つは、人に説明するツールになること」と吉田さん。融資を受けるときや補助金の申請では事業計画が必要。そのため事業計画書を作成する人が多いのですが、目に見えるものがあるとわかりやすいのです。
2021年3月のビーキャンでも、事業計画書の作成前の準備作業「計画の材料を書き出す」セミナーも実施しています。(ワークシートが必要な方は、事務局へご連絡ください)
「もう一つは、自分のためです」
事業は、初めに思い描いていたとおりに進まないことや、反対に予想以上に大きくなる場面もあります。
「事業がしんどいほうへ向いたとき、立ち戻るベースが事業計画。計画に無理があったのか、今やっていることを修正するべきなのか、計画があるから『差異』を分析できるのです」
頭の中に必ずある「事業への思い」を知っているのは、あなただけ。説明しなければ伝わりません。
「なぜあなたがそれをするのかを見える形にするのが事業計画書です」と吉田さん。
「日本政策金融公庫」のサイトにも書式をDLできるページがあります。シンプルで記入例も載っているので、この程度は書けるように準備しておくと良いようです。
補助金と助成金はどう違う?
事業計画書の話でも出てきた「補助金」についても、改めて吉田さんに聞いてみました。
「補助金」「助成金」の違い、皆さんは理解していますか?
助成金は、要件を満たしていれば受け取れるもの。最近では「雇用調整助成金」などがあります。
補助金とは、審査を通過すれば受け取れるもの。全体の予算が決まっているので、申請しても必ず受けられるとは限りませんし、用途も限定されています。
補助金は、後からお金が戻るので、先に自分で支払う必要があります。また、すでに事業を行っている人が対象で「小規模事業者持続化補助金」「事業再構築補助金」など、目的に応じた補助金があり、なかには、商工会議所のサポートが必須の場合もあります。
いずれにしても、普段から公的支援機関の情報を得られるようにアンテナを張っておくと良さそうです。
事業を軌道に乗せるには?失敗しやすいのは…?
「公的支援機関とは」「事業計画」など、少しカタイ話のあとは、ビーキャンだから聞ける「実際どうなの?」ということもお聞きしました。ここでは3つ紹介します。
一つめは「起業をしたくても踏み出せない人は、越えられない何かがあるのか」ということ。
吉田さんは「一人で考えてしまって決断できない場合と、相談しすぎて踏み出せない場合、失敗を恐れてしまうこともあるのでは」と分析します。
「事業計画書の話でも伝えましたが、その事業はなんのため、誰のためなのか、という使命感がはっきりあれば、起業へのハードルも越えられるのでは」
やはり、自分の頭の中にあるものを書き出す作業は重要なようです。
もう一つは失敗する原因について。事業を継続するために、どんなことに気を付けるといいのでしょう。
「最初に事業計画書を作れていない、見込みが甘い、それでも借り入れをする人はやはり、創業後が大変になることが多い」と吉田さん。
創業時に借り入れをする場合は特に慎重に計画するべきで、公的支援機関など多くの事例を知る人に相談しておきましょう。
「失敗しやすい人の特徴のもう一つは、受け身の人」
例えば、雪が降ってうまくいかなかったときに「雪が降ったからダメだった」ではなく「雪が降ることを想定していなかったのがダメだった」と思えるかどうか。ここが、失敗するかどうかの違いだそうです。
最後に、事業をうまく軌道に乗せている人の特徴もお聞きしました。
吉田さんの答えは明確でした。
- わからないことは聞く人
- 状況が悪いときもしんどいことをすべて言える人
- アドバイスを受けたらやってみようとする人
「この3つができる人は応援されるし、続けられます。応援されるって、共感されるということ」との言葉に、会場の参加者も大きく頷いていました。
事業は、成長のステージによって経営者にかかる負荷も異なります。組織が大きくなる際は、自分とタイプの異なる人が近くにいるかどうかも、事業を成長させるポイントだそうです。
まとめ・これからのビジネスは
多くの事例も交えた1時間半のお話は、参加者も自分のこととして考えるきっかけになったようでした。
商工会議所など公的支援機関は
- 情報元として使う
- 相談場所として使う
- ハブ、縁を作る場所として使う
この3つが活用のポイントです。
多くの経営者、起業前の相談、さまざまな事例を見てきた吉田さん。最後にこれから広がっていきそうなビジネスをお聞きすると「課題解決型のビジネス」は、周りを巻き込みやすいのではないか、とのこと。
「社会課題やコンプレックスをこれまでとは異なる視点から解決していくビジネスが、応援されやすい。
例えば『薄毛』はこれまでは『隠す』が普通。でもこれからは『こう見せよう』というビジネスが成長するかもしれません。
どう収益につなぐのかは、しっかり見る必要がありますが『それでいいんだという側』に立つビジネスは、共感を得るでしょう。逆に『これまで世の中にはない○○』などのアイデアに対しては、そもそも世の中にニーズがなかったのでは?という視点も必要ですね」
アイデアをビジネスとしてどう成り立たせるのか。
それこそ、商工会議所などへ相談してみると、客観的なアドバイスを聞くこともできるでしょう。
吉田さん、貴重なお話をありがとうございました。
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